photo: Satoshi Nagano

まちの先輩11人目:桑野京子さん(朗読ボランティア「青い鳥」代表)

2017/03/18

ーー図書館・歴史資料館「ふくちのち」は、利用する人たちのさまざまな挑戦を応援する場所でありたい。そんな想いも込めて、このコーナーでは、すでにいろんな挑戦をされている“まちの先輩”に、活動のきっかけやエピソードをインタビューしていきます。

まちの先輩、最終回は朗読ボランティア「青い鳥」代表の桑野京子さん。「青い鳥」は創設以来、視覚障がいをもつ方に向けて『広報あかいけ』『広報ふくち』、赤池町内の子ども向け雑誌『赤池のこども』や、赤池と上野の昔ばなしなど、地域に根付いた情報を録音し配布している。朗読のボランティアを続けて20年になる桑野さん。朗読に興味をもったきっかけを伺った。

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photo: Satoshi Nagano

桑野:私が小学5年生の頃、祖父が病気で目を悪くしてしまったんです。本や新聞を読むのが大好きな人でしたから、代わりに私が新聞を毎日読んであげるようになりました。祖父は長い間学校の先生をしていたので、私に新聞を読ませながら国語の勉強をさせるつもりだったのかもしれません。でもそのおかげで、国語の時間は必ず先生に指名されて朗読していたり、給食の時間には放送部員として本の読み聞かせをやったりしていました。こどもの頃は、それだけでちょっと得意な気持ちでしたね。それがきっかけで、文章を読むことに関係した仕事ができたらいいなと漠然と思っていました。その後、朗読に関わるような職に就くこともなく、結婚を経て九州へ引っ越し、一番下の子どもが高校に入って一息ついた時に、「声のボランティアはじめませんか?」と、旧赤池町・社会福祉協議会の呼びかけがあったんです。「これだ!」と思い応募しました。

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朗読ボランティア「青い鳥」は、現在52歳から82歳まで、計10人で活動を行っている。収録は、福智町の広報紙『広報ふくち』が発行される月初めに行われ、できる限りCDにメンバー全員の声が入るようページを割り振り、大体6日から10日ほどかけて完成させる。その後、社会福祉協議会に持ち込み『社協だより』を吹き込んだCDをパッケージし、メンバー自らの手で視覚障がいをもつ方へ、1点1点届けているそう。また、広報紙のほかにも昔話や絵本を読む活動を行うため、青い鳥は「朗読ボランティア」と名乗っている。

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photo: Satoshi Nagano

桑野:広報紙を読み上げて録音する作業は、「音訳」と呼ばれています。私は子どもに絵本を読み聞かせたり、毎月朗読の活動を行ったりしているのですが、やっぱり広報紙を読み上げるときとは感覚が違いますね。音訳は客観的に読み上げることが求められる他に、紙面に載っている写真やグラフも言葉に直して説明しなくてはいけないんです。この作業はとても難しくて……。例えば、写真を文章で表すときに「19個の色とりどりの上野焼のおちょこが並んでいます」という表現をします。できるだけ「綺麗な」「うつくしい」など形容詞を避け、聞き手が混乱しないように誰が・どこで・何を・どうしているのかを整理しシンプルに伝えるように心がけているんです。この作業をしていると字のごとく情報を「音」に「訳」しているな、と感じますね。一応読み方や音訳マニュアルがあるのですが、個人で練習したり、定例会で情報交換を行って、どうすればよりわかりやすくなるかをみんなで研究しています。うまく表現できた時は、数学で方程式を使って応用問題を解いた時みたいに「やった!」と嬉しくなりますね。また、そうやって技術を学ぶ一方で、「聞く相手がここに居ると思って朗読する」という原点の部分にも気をつけています。向こうは聞き手のプロですから、丁寧に読まないとすぐにわかってしまうんですよ。

平成25年に福岡で障がい者手帳を取得している人のうち、視覚に障がいを持っているのは3,694人。福智町では視覚障がいをもつ人に盲人用安全杖・義眼・遮光眼鏡・弱視眼鏡といった補装具や日常生活用具を給付したり、ホームヘルプやグループホームを提供するなど、障がいの程度に合わせてサービスを行っているが、さまざまな障がいをもつ人がいる中で、それぞれに細やかな対応をするのは難しい。

現在青い鳥がCDを配布しているのは、町内に住み、福智町へ配布を申請している6人。「申し出さえあればお届けできます。情報を必要としているもっと多くの人に聞いてもらいたい」と桑野さんは語る。たとえサービスを提供するのが少人数でも、困っている人がいればフレキシブルに動くことのできるボランティアは、公の機関や施設の手が届かない細やかな部分を担う、小さくも重要な器だと言えるだろう。
参考:福岡市障がい児・者等実態調査 報告書(http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/43841/1/03.2.pdf

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photo: Satoshi Nagano

桑野:毎月活動に多くの時間を費やしますが、それ以上に充実感が大きいです。私たちが音声化するのは、テレビやニュースで取り上げるにはあまりに狭い地域の情報です。しかし、その情報を待っている方が必ずいる。そうでないと20年も続けられなかったかもしれません。また日々の活動でメンバーや、視覚障がいをもつ方との和気あいあいとした時間も続けられている理由のひとつです。メンバーには高齢者や一人暮らしの方もいますし、人生の先輩または後輩として、私もいろんなことを学ばせていただいています。視覚障がいをもつ方とは、「今月は新人さんが入っていたね」「今月は誰さんの声なかったけど、大丈夫?」と、会うたびに会話ができ、それも楽しみのひとつですね。

今年は、方城語り部という方城地区の昔話があるので、それをCDにしようと計画しています。それが終わったら、今度は金田地区の昔話。私たちなりに完成度を上げて、今後も残る作品をつくりたいですね。図書館には録音設備が整った部屋があると聞いているので、そこで録音するのが楽しみです。

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