photo: Satoshi Nagano

まちの先輩8人目:今村良平さん(平成筑豊鉄道 営業企画課)

2017/02/28

ーー図書館・歴史資料館「ふくちのち」は、利用する人たちのさまざまな挑戦を応援する場所でありたい。そんな想いも込めて、このコーナーでは、すでにいろんな挑戦をされている“まちの先輩”に、活動のきっかけやエピソードをインタビューしていきます。

第8回目のまちの先輩は、平成筑豊鉄道に勤める今村さん。福岡市で生まれ育った今村さんは、幼い頃から鉄道の大ファンだったそうだ。2006年に平成筑豊鉄道(通称「へいちく」)で運転士として勤務が決まり、直方へ移住。以来9年間、地元の通勤通学客や、観光客を乗せて毎日筑豊を走り続けてきた。2016年から営業企画課へ異動し、現在は広報担当としてへいちくを盛り上げている。新たな立ち位置で鉄道の魅力を伝えるべく、試行錯誤を行う今村さんにお話を聞いた。

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今村:これからずっと運転士としてスキルを磨いていくものだと思っていたのですが、昨年、運転士の師匠だった上司からの誘いで広報を担当することになりました。今はへいちくをどう盛り上げるかを考えているのですが、その答えのかけらが遠くに見つかっているくらいで……(笑)。これからという感じです。

しかし、営業企画課になってから気づいたことが多くありました。そのひとつは、筑豊は一人ひとりの人が大きなエネルギーを持っているということ。この辺りは、車で2時間ほどの距離に福岡市と北九州市があるので、人がそちらに流れています。そんな状況を打開するため、へいちく沿線には自分たちの町を盛り上げようという強い想いのある人がたくさんいらっしゃるんです。広報という立場になり、イベントの運営などで地域の方と関わるようになって、そういった人のエネルギーを感じる場面が多々ありました。

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筑豊炭田で採掘された石炭は、遠賀川の流れを利用して若松港まで運ばれた。この水運には、「川ひらた」と呼ばれる米や日用品を運ぶための船が使われており、石炭の輸送量が増えるにつれて川ひらたは巨大化していった。しかし、炭坑の掘削に蒸気機関をもつ機械が入ったことで、水運での運搬が追いつかなくなり、より効率的に石炭を運搬するため明治24年に開通したのが筑豊工業鉄道だった。明治40年に国有化されたのち、平成元年に線路の一部を使って平成筑豊鉄道が開業された。

今村:へいちくの駅にも県外から鉄道ファンがいらっしゃるのですが、意外にもファンの多くがへいちくの国鉄時代の名残に魅力を感じているそうです。ニッチなところではありますが、鉄道ファンの視点から見てみると、思わぬところがへいちくの魅力になったりするんですね。かく言う私も幼い頃からの鉄道ファンで、各地の鉄道を見てきたのですが、最近は岡山県にあるローカル線井原鉄道に注目しています。筑豊と同じく、沿線の町を盛り上げようというエネルギーが、丁寧な接客として現れている鉄道で、ファンの間では車窓に流れるのどかな風景が人気です。ローカル線は、「もの」も「人」も溢れている都会のインフラとしての鉄道とは違い、「もの」も「乗客」も限られた地域の路線。だから、ローカル線が生き残るためには、都会にはない強みが必要なんだと思います。それが路線のもつ歴史だったり、地方ならではの時間の過ごし方だったりするんじゃないでしょうか。

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へいちくでは、毎月第3日曜日に沿線の史跡やみどころを訪ねる「へいちくウォーク」を開催している。平成26年からはじまった試みで、今年12月のコースは「歴史ある油須原駅を訪ねて赤村を歩く」と題して、赤駅から赤村特産物センター、油須原駅、蛇巻岩、源じいの森駅を巡った。のどかな風景の中をのんびりとウォーキングしながら歴史を掘り起こすこの企画は、県外からの旅行者はもちろん、筑豊に住む人も楽しむことができる。

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へいちくウォーク

また、不動産やアミューズメント施設など、私営の鉄道会社が沿線の開発を手がけているケースは全国的にみても多い。鉄道はインフラとしての機能だけではなく、沿線に住む人や環境、観光に積極的に関わることで、深く地域に根ざしていく可能性がある。「へいちくウォーク」は、何気なく生活している土地の歴史をもう一度読み解き、歴史とコミュニティの間に鉄道を位置付けていく機会でもある。古代から近代まで、さまざまな歴史的背景が混在する、福智町——筑豊という地域の、鉄道ならではの企画だと言えるだろう。

今村:正直なところ、経営は苦しいですが「へいちくがないと困る」という方のために、運行は続けていかなければいけません。まずは安全、確実にお客さんを目的地に送り届けるという鉄道の使命を果たしながら、へいちくや筑豊を盛り上げられるように、目の前のことから一つずつ取り組んでいこうと思います。

|インフォメーション|
平成筑豊鉄道
〒822-1201 福岡県田川郡福智町金田1145-2
http://www.heichiku.net/

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