photo: Satoshi Nagano

まちの先輩6人目:小林省吾さん(虎尾桜を心配する世話人会 会長)

2017/02/08

ーー図書館・歴史資料館「ふくちのち」は、利用する人たちのさまざまな挑戦を応援する場所でありたい。このコーナーでは、そんな想いも込めて、すでにいろんな挑戦をされている“まちの先輩”に、活動のきっかけやエピソードをインタビューしていきます。

まちの先輩、第6回は「虎尾桜を心配する世話人会」発起人で、同会の会長を務める小林省吾さん。以前から虎尾桜の存在は知っていたものの、正確な位置や開花時期は知らなかったという彼が、あるとき虎尾桜と出会い、枯死寸前だった桜を守るべく保存会を立ち上げる。ここでは、その挑戦にまつわる話を聞いた。

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photo: Satoshi Nagano

小林:春になると福智山の中腹に現れる濃いピンク色の桜が「虎尾桜」です。その存在は知っていながらも、年度の変わり目で忙しさに追われ、なかなか探すことができずにいました。ようやく桜と出会うことができたのは、平成元年(1989年)。山登りの友人とともに福智山へ行き、虎尾桜を初めて間近で見たとき、ただただその姿に心を奪われたのを覚えています。いままで見てきた桜と花の色が違い美しく、大きなコブでゴツゴツした木肌は、花が咲いていない時は桜とは思えない、独特の雰囲気を醸し出していましたね。

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虎尾桜 photo: 福智町役場

小林:ただ、見つけたときはすでに木の状態が悪く、根本の3分の2が腐っており、次の年に見に行くと3本あった大枝の1本が朽ち落ちていました。このままでは危ないと感じ、私が友人に「桜を守ろう」と声をかけたのが保存会を立ち上げるきっかけです。ただ守るだけではなく、このような素晴らしい桜があるということを「世間に知らせていかないといけない」と発起し、知人に声をかけ、集まった7人で活動を続けていきました。

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保存会立ち上げ当時の活動の様子(1990年)

小林:現在、保存会のメンバーは約30名。虎尾桜のある上野狭は、昔から風光明媚なところとして有名で、麓では上野焼や興国寺が有名ですが、まだ多くの観光資源が眠ったままになっているので、桜の保存活動とあわせ世間に知らせていくのが活動のメインです。活動初期は桜のために高くなった杉の木を切って風通しと日当たりを良くしたり、まちの人が通えるように山道を歩きやすくしたり、小川に橋をかけたりと、いろんなことをしていました。そうやって、地元の人にも自分たちのまちにある魅力的なものを肌で感じてもらいたかったんです。ありがたいことに毎年、多くのマスコミに取り上げられていますが、NHKの特集番組で全国の有名な一本桜を紹介した「一本桜物語」のメインとして虎尾桜を取り上げていただいたこともありましたね。

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虎尾桜周辺の整備

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山道の整備

虎尾桜は「エドヒガン(江戸彼岸)」という桜の野生種のひとつに分類される。江戸で春の彼岸頃に花を咲かせることからその名がついた。桜の中ではヤマザクラとともに非常に長寿の種であり、国の天然記念物に指定されている桜の多くがこのエドヒガンである。日本三大桜のひとつにも数えられている山梨県山高神代桜は、樹齢2000年にのぼるとも言われている。虎尾桜の樹齢は約600年。福智山は修験者の里として古くから信仰の対象であるため、霊木として大事にされていたということも考えられる。
参考:福智町Webサイト「孤高の一本桜 虎尾桜」

小林:エドヒガンはかなり珍しい種類の桜なのですが、それがどうしてここにあるのかはわかっていません。ただ、最初に桜を見つけた時、桜の木の下に立石のようなものがあったんですよ。エドヒガンは別名、墓守の桜と言いますが、それも墓石のようでした。また、福智山には修験道座主の屋敷跡があり、そのお墓にもエドヒガンが植えられている。そして、足利尊氏で有名な興国寺にもエドヒガンがあります。この桜のある場所の特異性を考えると、何かしらの碑があったのではないかと想像してワクワクしますね。

小林さんは、虎尾桜の保護活動だけでなく、個人的に福智町の歴史調査も行っている。最近は、北九州から筑豊にかけての遠賀川流域を中心に独自の調査を行い、大きな歴史の流れの中で、福智町がどのような存在であったのかを探求しているのだとか。福智町は伊方古墳や西金田にある城山横穴群など、古代からある遺跡が多いことで有名だ。また、遠賀川や彦山川、中元寺川などでは拾って集めることができるほど土器などの遺物が多い。桜の保存活動とまちの歴史調査、2つの生きがいを大事にする小林さんは、その根っこにどんな熱意を持っているのだろう。

小林:私自身が活動を行う上で大事にしていることは、その存在に「気づいてもらいたい」ということ。そしてもうひとつは、まちの中で良いものを見つけたら「守っていこう、伝えていこう」と自然と思うことのできる“心”を育てていくことです。自分が住むまちに、世にも珍しいものがあり、想像も及ばない歴史の中の伝説に由来していることがわかると、普段まちを見る目も変わっていきますよね。そんな発見と驚きを大切にする姿勢を、今後も伝えていけたらいいなと思っています。

|インフォメーション|
虎尾桜を心配する世話人会
〒822-1101 福智町赤池547-4
TEL:0947-28-4717(事務局)

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