photo: Satoshi Nagano

まちの先輩5人目:赤江香名子さん(けーきとぱんのおみせ ちびちび 代表)

2016/12/28

ーー図書館・歴史資料館「ふくちのち」は、利用する人たちのさまざまな挑戦を応援する場所でありたい。そんな想いも込めて、このコーナーでは、すでにいろんな挑戦をされている“まちの先輩”に、活動のきっかけやエピソードをインタビューしていきます。

まちの先輩、第5回は「けーきとぱんのおみせ ちびちび」の代表を務める赤江香名子さん。お子さんが食物アレルギーになったことをきっかけに、食への関心が高まったそうだ。自身の子育ての苦労から、同じ境遇のお母さんたちの助けになればと思い、小麦や卵、乳にアレルギーのある人を対象にしたお菓子屋「けーきとぱんのおみせ ちびちび」をはじめた。開店から5年、今では食物アレルギーの人はもちろん、幅広い世代の人たちが「ちびちび」のファンになっている。

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赤江:「ちびちび」は、どんな人でも“食べたいお菓子を選べる”という状況を、私たちが住む福智町で実現したいと思い、つくったお店です。アレルギーがある人でも食べられるお菓子は、専門店でも大抵1〜3種類くらい。圧倒的に種類が少ない上、あまり美味しくないことが多いんです。なので、「ちびちび」では、たくさんの種類をつくって、好きなものを選べる楽しみを味わってもらうことを大切にしています。お菓子は、人を元気にする心の栄養。アレルギーを持っている人もそうでない人も、みんなが美味しく食べられる「食のバリアフリー」をこのお店で実現していきたいと思っています。

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赤江:また「ちびちび」のお菓子の特徴は、お客さんのアレルギーによって材料を変えているというところ。卵のみが使えない場合や、小麦、卵、乳がすべて使えない場合など、その時々で組み合わせる材料や配合を考え、できる範囲で最高のものを提供できるようにしています。材料に制限があるので、その分、材料にこだわっていますね。

季節を問わずさまざまな食べ物が手に入り、食の安全性や産地・効能にいたるまでさまざまな情報が共有しやすくなった現代。私たちは、自分たちの身体をつくる「食」の情報に、より主体的にアクセスできたり、同時に個人で発信していったりすることも難しくなくなった。例えば、アレルギーをもつ子どものために親がレシピを検索し、食材の原産地やつくられ方が気になればそれをたどることもインターネット上で可能だ。今「食育」という言葉が広くいろんな場面で取り上げられているのも、リサーチのための便利な道具が普及したことで、食について主体的に考えようとしている人たちが増えているからかもしれない。

1896年(明治29年)、医師・石塚左玄の著した『化学的食養長寿論』の中で「食育」という言葉が初めて登場する。左玄は、体が食によってつくられていることや、地域のものを旬のうちに食す重要性、子どもへの教育で基礎となるのは食育であることを説いている。特別なことを言っているわけではなく、かつてあった当たり前な食との関わりを提示している。しかし、扱われる食材や食べる環境、家族形態など、食をとりまく状況が変わり続けている現代において、この時代に合った「食育」はどんなかたちになるのだろうか。
参考:岩佐勢市著『食育の祖 石塚左玄物語』(2010年/正食出版)

赤江:お店を経営している身ではありますが、本当は、お母さんが自分で納得した材料で、誕生日ケーキをつくってあげてほしいという気持ちがあります。お店をはじめる前は保育士をしていたので、子どもの反応を見ればなんとなく、お母さんのつくったものは安心して食べているな、というのがわかるんです。食育はお母さんが教えるのが一番良い……とはいっても、やっぱりいろんな理由で手づくりするのは難しいですよね。だから、少しでも多くのお母さんが子どものためにケーキを手づくりできるよう、お店としてもお手伝いできたらいいなと思っています。

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赤江:ひとりの親として、食育において、“食はバランスが大切”ということを強く感じています。何が良くて悪いかを知ることはもちろん大切ですが、偏り過ぎてもいけません。特に添加物は、あまりに避けていると、逆に食べたときの反動がきつくなってしまう。現代において普通に生活しようとすると、どうしても添加物からは逃げられません。添加物とどう共存するかについても考えなくてはならないことだと思います。そういう理由から、私は、子どもに手づくりでないおにぎりも食べさせているんですよ。

例えば、高校の帰り道に、友だちとファストフードを食べながらただただ話す。そんなコミュニケーションも、子どもたちにとっては大切な時間だと思うんですよね。今、うちの子どもは9歳ですが、高校生までにどんな場所でもみんなでワイワイ食事できるよう、食を通した身体づくりをサポートして社会に送り出したいと思っています。

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赤江:実は、アレルギーと向き合いはじめた頃、「子どものために!」と躍起になって、日々の料理をつくるたびに無農薬、無添加の、比較的高価な材料を購入していた時期もありました。当時は「とりあえず体にやさしい自然食品を」と思っていたんです。しかし食品は無農薬、無添加であることのほかに、“地域のものを食べる”ということも大事なんですね。自分と同じ土地や水、空気で育った野菜や果物は、身体に馴染みやすい。このお店で使ういちごやイチヂクといった果物、きなこなどの加工食品もなるべく福智町産を使うようにしています。

“身体に良いこと”をすべての基準にすることが正しいのかどうかはわかりません。今の状況に合わせバランスをとって、添加物をとるのもひとつの考え方です。そして食材をよく知り、一つひとつ丁寧に選んでいく。そんな暮らしの態度をこれからも保っていけたらなと思います。

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|インフォメーション|
けーきとぱんのおみせ「ちびちび」
〒822-1212 福岡県田川郡福智町弁城3836-4
TEL:0947-22-2728
営業時間:10:00~18:00
定休日:火曜日
http://www.chibichibi39.com/

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