カウンターの位置を変更する

2017/03/16

ふくちのちを設計するにあたっては、運営チーム・設計チームが毎月のペースで全体ミーティングを開いていました。図書館の運営チーム・歴史資料館運営チーム・役場の担当のみなさん、私たち設計事務所(o+h)、デザイン事務所(UMA/design farm)、編集事務所(MUESUM)、そして図書館アドバイザーの花井裕一郎さんが一同に集まって、運営の方針から設計内容、その他スケジュールなどの現況を共有します。より詳しい内容は分科会と呼ばれる、個別のミーティングで話し合われていました。試行錯誤の設計プロセスの中ではいろいろ印象的な出来事がありましたが、中でも私が特に記憶に残った設計の変更があります。それは、貸出し・返却のカウンターとオフィスの位置の変更です。

もともと、貸出し・返却のカウンターとオフィスは入り口を入ってすぐの右手側、すぐに目につくところにまとめて計画していました。訪れた人とのコミュニケーションの要になるカウンターは、機能的に一番目立つところにあった方がよいのではと考えてのことでした。しかし、それを1階の一番奥のスペースに移動し、代わりに「ものづくりラボ」という3Dプリンターなどのデジタル工作機器がならぶものづくりのスペースを、1番手前に移動して来たのです。それは一体なぜだったのでしょう?

きっかけはUMAの原田さんとMUESUMの多田さんが、イタリア・ボローニャにあるサラボルサ図書館へ視察に行ったことでした。視察を案内してくださったのは、サラボルサ図書館の立ち上げに携わり、現在は世界中で図書館づくりアドバイザーを務めるアントネッラ・アンニョリさん。彼女は、私たちが設計前から大切に読んでいた『知の広場』の著書でもあります。サラボルサ図書館は、光の差し込む吹き抜けの空間を中心に、多様な本との出会い、人との出会いの生まれる空間、とても自由な雰囲気が特徴で、まさに「知の広場」と呼ぶにふさわしい図書館でした。さらに、私たちは、少しだけお時間をいただき、運良くアントネッラさんにアドバイスをいただくことができました。

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サラボルサ図書館(イタリア)

ふくちのちが目指しているのも、広場のように自由でのびのびとした空間。それであれば、カウンターやオフィスといった、図書館をバックアップする機能が入ってすぐに目にとまるよりは、カフェでコーヒーを楽しむ人、ものづくりに夢中になっている人、広場を走り回るこどもたちが第一に肌全体で感じられるような空間がよいのではないだろうか。アントネッラさんのアドバイスから、改めてカウンターの位置を考えようと議論が起りました。

しかし、図書館にやって来た人がまず何かを質問したい時に、一番奥のカウンターまで行かなければいけないのは不便なのではないだろうか? 運営しにくくないだろうか? みなで何度も議論を重ね、最終的には入り口を入ってすぐのところに、ちょっと立ち寄ったり、困ったら助けてもらったりできる小さな丸いカウンターを設け、主となる貸出し・返却カウンターは1階の一番奥に設けることになりました。オフィスが奥に移動したことで、書庫やその他の裏方のスペースとの連携がしやすくなり、また、ふくちのちの1番印象的なスペースであるワクワクワ広場には、「ものづくりラボ」がしっかり顔を出すことになりました。

さまざまな機能がひとつの建築に入る時に、それらが互いにどのように関係するかというのは、とても大切なことだと感じています。ふくちのちの場合には、お互いに何をしているかが見える空間、例えば、本を読んでいる人の向こうに料理する人やものづくりに取り組む人が見えるような空間をつくりたかったのです。いろんな人が思い思いに過ごし、多様で自由な価値観が館全体に溢れている建築になるといいなと思います。

大西麻貴 [建築家/o+h]
1983年愛知生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒業。2008年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2008年 同大学博士課程在籍中に百田有希とともに、o+h(大西麻貴+百田有希)建築設計事務所を設立。

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