ものづくりの視点と試作 〜終わりのはじまり〜

2017/03/18

--つくることを生業にしている、デザイナーの吉行良平と設計チームの一人でもあるデザイナーの原田祐馬が、さまざまな福智町のものづくりの現場を訪ねました。そこで得た視点から、試作をつくり、手を動かす会議の全記録。

最終回となる第9回目では、渡さんから届いた焼き上がった器の写真を見ながら吉行さんと原田さんがこれまでを振り返ってみました。

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原田:この記事もついに最終回というわけですが、吉行くんが感じたことや、体感して考えたりしたことを聞いてみたいなぁ。
吉行:渡さんから届いた焼きあがりの写真を見て思ったけど、やっぱり釉薬がかかって色がつくと、もののイメージがまったく変わるなと。つくり方やプロセスがどんなにおもしろくても、最終的にイメージをつくるのはかたちと色なんですよね。轆轤を回したときに土の色は見ていたけど、釉薬がかかると全然別の仕上がりになっているのにドキッとしたわ。
原田:たしかに、釉薬は化粧であるのと同時に機能性や強度を上げるものだと聞いていたけど、それを超えた仕上がりの強みを感じたなぁ。早くもまた渡さんのところにいって、釉薬のことをもっと詳しく聞いてみたくなってきた。
吉行:そして、芋の治具を使った器も釉薬がかかって、すごくかっこよく仕上がったなぁ。写真を見たときに、つい雄叫びをあげました。

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原田:雄叫び(笑)。でも、渡さんがもう1回焼き直したいって言ってたから、まだ完成じゃないのかもしれないんだけど、こっちの器は、惑星みたいなテクスチャになっているなぁと。なんだろう、色やツヤなのか、かたちなのか。
吉行:うんうん。
原田:つくった治具で渡さんに轆轤をひいてもらった芋の器は、決して凛とした美しさは無いんだけれど、妙に語りかけてくるものになってる気がする。
吉行:治具って本来はかたちを揃えて量産するための道具なのに、この芋の治具は使った途端に途中段階のようなものが量産されちゃうというか。普段、僕がモデリングをするときには、つい横や正面からの視点ばかり気にしてしまうんやけど、轆轤をひいて感じたことは、視点が俯瞰に近いということ。中を覗きながら外側をつくるっていうのは不思議な感覚。頭でっかちに、つい治具を考えてしまったけど、治具に頼るような作業では無かったなぁ、という発見もおもしろかった。
原田:かたちを考える上で、手と頭との動きが一体となってなかったっていうのは、「正面と上と底」っていう三面図的な思考から来ているからかなぁ?
吉行:確かに。普段、自分のつくり方での視点でしか考えてなかったなぁ、っていうのも発見だったわ。
原田:渡さんのお話の中で、印象的だったのは「つくるときに見えているのは中だけど、意識しているのは外」っていうところ。中をつくったらそのまま外側が立ち上がってくるというのは、手を動かしてみて僕も実感しました。吉行くんが使っている3Dモデリングのアプリケーションって、三面図的なものを超えて、さっき言っていた陶芸の手の動きに近いことができる可能性もあるのかなぁ。今回の吉行くんの経験が、これからの制作に影響されていきそう?
吉行:もうすでにそれは影響してるかもしれない。最近漆器のデザインを考えているんだけど、ちょっと高めの視点でモデリングをしてみたりしていて、違いはもうすでに出てきてるなぁ。木でつくるものでも、どこから見ているかっていう視点だけでかたちが大きく変わるかもしれない。
原田:うわぁ、楽しみ。実際そうやって影響していること自体がおもしろい! 吉行くんがこれからつくるものが楽しみで夜も寝られへんわ(笑)。コーヒーの粉でつくっている器の第2弾のかたちづくりにも影響したりするのかも。

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吉行:そうそう。それが今回轆轤をまわして以来、コーヒーの器をつくるのがストップしちゃっていて。前から気になってたんだけど、この器は道具というよりもコレクション的に見てもらうようなものになっちゃっていて、本来、目指していたものとは違うのがひっかかってる。この器を渡さんのところに持って行ったときに、歪みだったり粉の粒の荒さだったりと、コーヒーの粉と陶土の共通項を見つけてお話をしてくれて。それを聞いたときに、このコーヒーの器はもっと考えることができるし、ほかにもかたちがあるんだろうなと思った。
原田:僕も「内側が外側になる」っていうことは、ごく当たり前だけど忘れてたことだなぁと思った。僕たちもパッケージデザインなどを考える上で、その意識があるだけでまたかたちが変わるんだろうなと思った。
吉行:当たり前のことすぎて、理解できていると思い込んでいるけれど、意識してみた途端にスムーズじゃなくなっている(笑)。渡さんが芋の治具を使いながら「芋より手の方がつくりやすい」って言ったことも学びが多かった。
原田:ある種のおおらかさというか、自分たちが思い込んでいる超職人気質のつくり方ではなくて、僕らが話をしたことを許容してくれるようなおおらかさが、上野焼にあるなぁと渡さんと一緒につくってみて感じました。最後に質問だけど、福智町のように、焼き物があるまちに通ってみてどうだった?
吉行:もちろんそれぞれ地方によって気質は違うのだけど、福智町の場合は「焼き物のまち」だけではないところがおもしろいと感じました。鉄工所や木工所にも連れて行ってもらったし、さまざまなつくる視点がある。僕の活動にも共通して言えることだけど、ひとつのことにすがってしまうと次のステップに行きにくくなると思っていて。◯◯だけで何かしなきゃっていうんじゃなく、そのまわりに存在する、感じられるものとも一緒につくっていくという、いろいろある環境でないと「おおらかさ」も出ないんじゃないかなぁと思う。そうやって考えると、福智町は「◯◯のまち」って言えないことがおもしろい。どこかで、「◯◯のまち」って言いたくなるんだけど。僕たちも、あるまちを訪ねるときに、「なにがあるの?」ってよく聞いちゃうんだけど、そうじゃないんだなぁと。
原田:そやね。これからは、なにがあるのかを自分たちで、そこの暮らしに出会ってみることがヒントなのかもしれないなぁ。9回続いたこの連載もこれで、終わりですが、早く渡さんのところに行って実物が見たいので、そのときに9回裏を繰り広げましょう。
吉行:9回裏(笑)。実際に使ってみたい! 何飲もうかなぁ。
原田:そりゃあ、さつま芋のポタージュでしょう(笑)。

おわり

原田祐馬
1979年大阪府吹田市生まれ。「UMA / design farm」代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

吉行良平
1981年大阪生まれ。オランダのデザイン事務所を経て「吉行良平と仕事」を立ち上げ、プロダクトデザインを中心に商品開発やプロジェクトを行っている。 日常の情景、つくり方を通して、頭と手を動かし実験、検証していくことであるべき、色やかたちを探っている。

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