ものづくりの視点と試作 〜実践編 その3〜

2017/03/17

--つくることを生業にしている、デザイナーの吉行良平と設計チームの一人でもあるデザイナーの原田祐馬が、さまざまな福智町のものづくりの現場を訪ねました。そこで得た視点から、試作をつくり、手を動かす会議の全記録。

第8回は、吉行さんの治具を使って器をつくってもらうため、いよいよ轆轤(ろくろ)を回して実践に入ります!

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渡:よしっ! では、吉行さんのつくったオリジナル治具を使ってみよう。
吉行:本当に使ってもらえるなんて、感動だなあ……!
渡:2人も後で轆轤やってみます?
吉行・原田:やりたいです!

(渡さんが轆轤を回しはじめる)

渡:あっ、治具が大きくて内側に入らない(笑)!
吉行:治具が大きすぎたかなぁ……。
渡:大丈夫。先に手で少しかたちを広げよう。

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渡:治具が入る大きさになったら、内側から押し当てるようにして使います。
吉行:なんでこんなに綺麗にかたちが立ち上がるんだろう。手の使い方なのかなぁ。
原田:これって焼き上がったらどのくらい縮むんですか?
渡: 1割5分だね。85%くらいになるかな。よしっ、治具も当たってかたちが出てきたよ!

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吉行:なんとなく芋っぽくなりましたね! うれしいなぁ。
原田:芋っぽくって……それ土の色やろ(笑)!
吉行:色じゃないですよ(笑)!
原田:吉行くんがつくったCGの回転体(※第5回目の記事参照)そっくりになってきたね(笑)。治具が当たったところは、ちゃんとかたちとして出てくるんですね。
渡:そうだね。石膏型で内側と外側と挟んでかたちをつくる機械轆轤っていうものもあるよ。
原田:吉行さんの治具、使ってみてどうでしたか?
渡:うーん! やっぱり、この治具を使うより自分の手でやった方がやりやすいかなぁ……。まぁ、本当に使える道具だったら、とっくに世の中にあるからね(笑)。
原田:たしかに! このかたちをつくろうと思ったら手でもつくれますか?
渡:むしろ手の方がつくりやすいかな(笑)!
吉行:僕も見ててそう思いました(笑)。
渡:ところで、これは器として使えるのかな……?
一同:(笑)。
原田:シンプルに芋そのものだけでも治具になるのかな。
渡:昔の話だけど、貝をヘラ代わりに使っていたことはあったみたいだよ。
吉行:へぇ! そしたら、輪切りよりも丸々1個の方が使いやすいのかな?
渡:ごろっとしたのをこのままつっこむの!? それよりはまだ今回の治具の方が使いやすいかな。あくまでも道具は手の延長、だからね。
吉行:「手の延長」という言葉は納得だなあ。
原田:吉行くんの見方ってプロダクトデザインの思考から生まれているものなのかな?
吉行:そうかもしれない。モデリングしてものづくりするときの考え方とはやっぱり少し違いますね。あっ、もしかしてサツマイモのパーツだけのほうが治具使いやすいですか?
渡:うーん、どうかな? やってみようか!

(サツマイモのパーツのみ取り出して、再び轆轤を回しはじめる)

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吉行:使い心地はどうですか?
渡:うーん、ふつうやね(笑)。
原田:芋をヘラ代わりに使ってる感じか。あっ、でもかたちに変化が! ちょっと段差出てきて、鈴みたいなかたちだ!

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吉行:同じ芋を使っても、サイズや使う個数で見え方が変わっておもしろいなあ。
原田:本当に使ってもらってありがとうございます。自分たちで話し合っていたものが、こうやって実験的に使ってもらえると、陶器をつくる実感が身にしみました。
渡:良かった! さて……! 轆轤やってみますか?
吉行:やってみたいです! できる気がせんけど……!

(渡さんの補助を受けながら吉行さんが轆轤を回しはじめる)

吉行:よしっ。それでは、お願いします!
渡:では轆轤を回しましょう。何回か足でペダルを踏んでスピードをつかんだら、少しずつ土をつまんでみましょう。
吉行:うわっ、固い!

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渡:少しずつ、少しずつ。土をつまんで、かたちを立ち上げて……あぁ!
吉行:わっ、ちぎれた! ちぎれるとダメなんですか?
渡:ちぎれたらダメだね。今度はすこし早めに轆轤を回してみようか。
吉行:なんかね、少しずつって思っても、手が勝手に持ってかれちゃうんですよね。
渡:最初は力を入れずにゆっくり、脇はしめてね。まずは指を当てるだけ。それを何回か繰り返した後は、少しだけ指先に力を入れて、少しずつ上に立ち上げて、を繰り返していきます。

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吉行:かたちが立ち上がっていけばいくほど、手がもってかれちゃう……! すごい集中力と体力がいる仕事だなぁ……!
渡:いい感じになってきたね。それでは、最後に仕上げをしよう。
吉行:いや、崩れそうだからもう触りたくない……(笑)! 繊細すぎて、瞬きするタイミングも無いくらい。すっごい楽しいけど、見てるのと全然違うなぁ……!
渡:次は原田さんやってみましょうか。

(渡さんの補助を受けながら原田さんが轆轤を回しはじめる)

原田:はい!
渡:基本は右手の中指と親指ですべらせながらつくります。中指が外で親指が中。あとの指は補助。左手も親指の外に補助として当てる。最初は力を入れずにゆっくりね。
原田:僕、利き手が物の大きさによって変わるんですが、手は逆でもいいですか?
渡:大丈夫。たぶんだけど、轆轤の回転と利き手は関係ないんじゃないかな。というのも、小石原焼と上野焼は回転が逆なんだよ。
原田:えっ! そうなんですか?
渡:謎なんだけどね、産地によって違うの。基本的に中国は反時計回り、朝鮮半島は時計回り。僕が昔いってた朝鮮の窯元は反時計回りだったけどね。僕の考えでは、甕(かめ)などの大物は反時計回り、食器などの小物は時計回りのような気がしてる。

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原田:わぁっ、難しい……手が小さいせいか真ん中に手が届かない気がする……!
渡:そういうときは、少し手の使い方を変えるんだよ。
原田:底から立ち上げていくっていうのが、なんだかかたちを意識できなくてコントロールするのが難しくて。
吉行:やってみて思ったんだけど、つくるときの目線が想像してたのと全然違った。轆轤を回すときは、ほぼ俯瞰の目線だから全体のかたちが全然見えなくて……。ガイド無しに手だけでかたちを立ち上げてるっていうのが本当にすごいな。やっぱり飯碗みたいな小ぶりなお椀が基本形ですか?
渡:かたちが広がるとかたちを保つのが難しくなるから、どちらかというと湯飲みとかまっすぐなものが基本かな。
吉行:なるほど。そういえば、原田さんと治具のアイデアを考えていたときに、体を固定することや姿勢を限定するような身体的な制限も治具になるか、というような話をしていたことがあって。
原田:そうそう、脇をしめる道具とか。
吉行:そういう自分なりの姿勢ってあるんですか?
渡:膝とか足使ってやる人はいるみたいだよ。
吉行:体の一部を縛ったりすることはありますか? たとえば指を全部縛ってかたちをつくるとか。
渡:さすがにそれはないかなあ(笑)。
吉行:ですよね(笑)。それにしても貴重な体験でした!
渡:いやー、初めての体験でここまでできるっていうのはなかなかです。先生がいいからかな(笑)。
原田:そのとおりですね(笑)! 焼き上がるのが待ちきれない!
渡:また、いつでも来てくださいね。焼き上がったらまた連絡いれますよ。
原田・吉行:ありがとうございます! よろしくお願いします!

原田祐馬
1979年大阪府吹田市生まれ。「UMA / design farm」代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

吉行良平
1981年大阪生まれ。オランダのデザイン事務所を経て「吉行良平と仕事」を立ち上げ、プロダクトデザインを中心に商品開発やプロジェクトを行っている。 日常の情景、つくり方を通して、頭と手を動かし実験、検証していくことであるべき、色やかたちを探っている。

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