ものづくりの視点と試作 〜実践編 その2〜

2017/03/16

--つくることを生業にしている、デザイナーの吉行良平と設計チームの一人でもあるデザイナーの原田祐馬が、さまざまな福智町のものづくりの現場を訪ねました。そこで得た視点から、試作をつくり、手を動かす会議の全記録。

第7回は、渡さんの工房で釉薬や陶土のつくり方について教えてもらいました。

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渡:ここでは粘土をつくっています。山からとってきた原土をしっかりと乾燥させたあと、水に土を溶かして余計なものを取り除いて、粘土だけ取り出します。
吉行:沈むものと浮くものとを分けているってことですか?
渡:そうそう。水簸(すいひ)と呼ばれる作業で、砂や不純物をとりのぞく工程を何度もくりかえしています。

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吉行:わあ、トロトロだ! 色も綺麗やなぁ。
原田:これが、固まって陶土になるんですね。
渡:これはもう不純物も取り除いてあるから、ある程度水分を抜いたら使えるよ。ブレンド用の土だから、これだけでは使わないんだけど。
原田:この土はこのあたりで採れたものですか?
渡:その通り。きめが細かくて鉄分が多い土。この土をブレンドすると轆轤を引きやすくなります。
原田:へぇ! 奥深いなぁ。
渡:ではせっかくだから水簸の作業も見てもらおうかなぁ。まず、これが原土。

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原田:ゴツゴツしてる!
渡:先ほどもお話をしたように、この原土を水に溶かして、砂や不純物と粘土を分けていきます。最初のうちはまだ濃度が濃くて砂と粘土分が分離するのには時間がかかるんだけど、回数を重ねて濃度が薄くなると分離するのも早くなっていきます。

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渡:砂が底に沈んでいるから、こうやって上澄みの粘土が溶けているところだけすくって。砂がでてきたらまたしばらく待って、上澄みだけをすくって……。完全に分離するまで続けます。
原田:すごい時間がかかっている……。
吉行:砂を残したまま、轆轤を引くこともあるんですか?
渡:あえて精製をしない土を使うこともあってその場合には、粗目のふるいにかけるくらいにして、この作業をしないこともありますよ。

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渡:これが、すくった上澄みを1日置いたもの。水と粘土・砂が綺麗に分かれます。
原田:わぁ、水が透き通ってる!
渡:ここから水だけ抜いて、また同じ作業を繰り返します。これを何度も繰り返すと、やがて完全に砂だけが残るようになります。ちなみに、今回は砂は捨てちゃうけれど、ほかの原土を使うときは、乾燥させた砂をふるいにかけて細かい砂だけ粘土に戻すこともあります。
吉行:なるほど……!
原田:どこの水なんですか?
渡:井戸水です。この水の中にもアルカリ成分やバクテリアなんかが入ってて、大事な成分なので捨てずに再利用する。この成分が焼いたときに粘土を溶かす役目をもっていたりする。だからこの水は捨てません。
原田:大切な水ですね。
渡:そう、とっても重要です。
吉行:工程が多くて、どっかの手順忘れちゃいそう……(笑)!
渡:次に、釉薬の話。これが釉薬に使っている藁灰(わらばい)です。

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原田:おぉ、黒い!
渡:これは水の中に入れても細かくならないので、石臼に入れて潰していきます。
吉行:餅つきみたい!

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渡:よいしょ、よいしょ。この潰したのを、釉薬として使います。
吉行:すごい、細かくなってる! こんなふうになるんだ!
原田:ちょっとこの潰した藁灰、触ってみていいですか? ……うわぁ、ねっちょりしてる!

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渡:ほかの方法としては、ポットミルという磁器質の玉がたくさん入っている機械に藁灰を入れて細かくするような方法もあるんだけど。細かくつぶされた粒子の状態や形状が違うのか、石臼で潰した藁灰の釉薬と焼き上がりが若干変わってしまうので、僕のつくり方には合わなくて……。釉薬が定着しないのか、焼き上がった陶器の釉薬に裂け目にみたいなのができちゃって。
原田:機械だと綺麗になりそうだけど、均質になりすぎちゃうのも合わないのかなぁ。
渡:結局、原始的なこの方法でやっています。
吉行:大変な重労働だ……! 一粒一粒がもったいなく思えてきますね! この潰したものが釉薬の元になるんですか?
渡:そうだね。潰した藁灰を先ほどの粘土の水肥の要領で、上澄みだけをバケツに移して釉薬として使います。底に沈んでいるものは不純物が多いので捨ててしまいます。
吉行:もしかしてなんですが……、藁灰自体も自分でつくるんですか?
渡:そうそう! 農家さんに藁を残してもらうようにお願いして、田んぼの片隅で焼いてつくらせてもらってます。藁灰は完全に燃やしちゃうといけないから、途中で水をかけて燃焼を止めて……調整しながらつくる。結構ハードな作業でね、稲刈りの季節はまだ暑いから、下手したら熱中症になりそうだよ(笑)。
原田:想像をはるかに超えたプロセスがある……。
渡:この藁灰は、3年くらい前に田んぼを一反分、焼かせてもらったものです。それで、何年分かの藁灰になります。
吉行:肉体労働ですね! 話を聞いてたら、山に行ったり、田んぼに行ったり、海で貝殻を取ったり(※第1回参照)すごいなあ!
原田:まさか、藁灰までご自分でつくられてるとは思わなかったです!
渡:本当はなるべく楽をしたいんだけどね。でもそれだとどうしてもうまくいかないところがあって、仕方なく昔ながらの手でつくるはめになっちゃてるんだけどね(笑)。さぁ、そろそろ轆轤をまわしに行こうか!

原田祐馬
1979年大阪府吹田市生まれ。「UMA / design farm」代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

吉行良平
1981年大阪生まれ。オランダのデザイン事務所を経て「吉行良平と仕事」を立ち上げ、プロダクトデザインを中心に商品開発やプロジェクトを行っている。 日常の情景、つくり方を通して、頭と手を動かし実験、検証していくことであるべき、色やかたちを探っている。

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