ものづくりの視点と試作 〜実践編 その1〜

2017/03/09

ーー「つくること」を生業(なりわい)にしているデザイナーの吉行良平と、「ふくちのち」設計チームの一員でもあるデザイナーの原田祐馬が、さまざまな福智町のものづくりの現場を訪ねました。そこで得た視点から、試作をつくり、手を動かす会議の全記録。

第6回では、第4〜5回で出た吉行さんのアイデアを持って、渡窯の渡さんを訪ねました。

吉行・原田:こんにちはー、今日はよろしくお願いします!
渡:こんにちは! お久しぶりです。
吉行:いやーお久しぶりです。今日はいろいろと考えているものを持ってきたので、お話を聞いて欲しくてやってきました。僕は轆轤(ろくろ)でものをつくる仕事はまだやったことがないのですが、前回、お邪魔させていただいた際に自分自身の興味でもあるのですが、どういう考え方でものが立ち上がっていくのか、渡さんのお仕事やお話を聞いて感動しました。
原田:今回のプロジェクトは、上野焼で何かものをつくることができないかという気持ちから始まったのですが、渡さんのお話を聞いてから、器をつくるという目的よりも、“どうやってものがつくられたのか”を考える、というところに変化していきました。
渡:なるほど……?
吉行:そこで、最初、例えばスープ皿をもしつくるとしたら、その中身である材料を治具(じぐ)=定規として考えたらどうだろうかという話をしていたのですが。
原田:あとは、子どものころに行った陶芸教室で思っていたサイズより焼き上がった器が縮んでしまった経験なども思い出したりしながら、この日を待ちわびていました(笑)。
吉行:いまではプロダクト(=製品)をつくるための知識として、焼き上がりの収縮具合を当然知っているのですが。けれど、焼き上がりを想像しながらつくるプロセスには、種をまいて育つまでどうなるかわからない野菜などの食材との、共通点を感じているんです。例えば、焼き上がりの収縮率が0.75倍だとすると、その倍率でカットした食材を治具(じぐ)にしてみてはどうか、というアイデアから、これは始まっています。

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渡:(治具についている野菜片を見て)えっ? これなに?!
吉行:あっ、それはサツマイモなんですけどね。こんなふうに野菜の切り方によって変わる断面もうまく活かせないかなと思って。これを回転体として展開してみたらおもしろいのではないかと考えてみました。一応、この治具を用いた回転体のモック(=模型)もつくってみたり。

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渡:なるほどねー。つくるものに合わせて粘土べらをつくっている人もいるんだよ。僕は牛べらっていうのをよく使ってる。動かし方によっていろんなかたちをつくることができるから。
原田:へー! あとで見せてください!
吉行:ふむふむ。原田さんとも話をしていたのですが、焼き物は内側を意識してつくるのか、外側を意識してつくるのか、不思議に思っているのですがどうなんでしょうか?
渡:うーん、ものによって違うんだけどね。
原田:触ってると同時に立ち上がるんですよね?
渡:例えば、抹茶碗の中でも井戸茶碗っていうのがあって、それは両方意識しながら一発でつくらないといけなかったりする。轆轤目がありすぎてもいけないし、中にも轆轤目が必要だし、ちょうど良い具合じゃないといけない。井戸茶碗っていうのは、できる限り手を加えないようにつくるものなんだけど、それは数をつくらないと良いのができないんだよ。
吉行:なるほど。ヘラはやっぱり中に当てることが多いんですか?
渡:轆轤目を消す場合は、外からあてたりするよ。コテを中と外から同時にあててる。
吉行・原田:すごい!
吉行:コテって初めて聞いた! コテの素材は何ですか?
渡:コテもヘラもまあ一緒だよ。コテにもいろいろ種類があるんだけど……。下ごしらえするコテは杉でつくるかな。焼いて杉目を立てることで摩擦が少なくなるので、滑らかに操作できる。ところで、吉行さんがつくってきた道具はヘラというかトンボというか……何というんだろう。
吉行:何でしょうね(笑)。
渡:壊れていいなら使ってみようか!
原田:確かにすぐに壊れそう(笑)。
吉行:ぜひお願いします!
渡:了解(笑)。
吉行:ところで、渡さんの作品って大きいものも小さいものもあると思うんですけど、どちらに比重があるのかも聞いてみたいっす。前に見せてもらった焼き杉の木目だけ残っていたようなヘラ(以下写真参照)はどうやって使うんですか?

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渡:これは、大きいものをつくるときに使うんだよ。これも内側から当てて使うものだね。
吉行:へー! 手じゃなくてコテを当てるんですね!
渡:いや、最初は手を使うよ! 大まかなかたちは手でつくっておいて、仕上げにコテを使っていく。
原田:僕たち、今日こちらに来る新幹線の中でも話をしてたんですが、轆轤を使わないものってあるんですか?
渡:板状のものだと、使わないこともあるけれど……。
原田:こういう、外が削られているものも轆轤を使っているんですか?

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渡:それも轆轤だよ。厚めにつくって削ぎ落としてる。
原田:四角い形状のものはどうしてるんですか?
渡:それも轆轤だよ。
吉行:えー! 四角いのも轆轤なんですか!
渡:これは、僕が編み出した技法なんだけどね。ほかにやってる人もいるかもしれないけど……。
吉行:必殺技!
渡:板を貼り合わせてかたちをつくる人もいるけど。乾燥時や焼成の時に、板のクセが出ちゃうことがある。取っ手もお皿をつくったあとから付けると落ちたり沈んだりしちゃう。だから僕は、取っ手も轆轤でつくる。張力が出るのか、強度も出る。
吉行:へー! 均一にしっかりこねたら密度も均等になって、収縮率も平均になるのかと思ってた。轆轤でひくことが強度になるっていうのは本当におもしろいですね。
渡:板状のものは、どうしても伸ばしたときのクセがでちゃう。僕の知り合いで、つくるものそれぞれに専用のヘラをつくっている人がいて。その人は30歳くらいから陶芸を始めたんだけど、どこかの窯で修行をしていた方ではないので、正当な方法だと自分は勝てないからと、道具や機械をすごく工夫しているの。その人は昔、鉄工所をしてたから、電気窯も自分でつくちゃって。油圧式の重機のアームを古道具屋さんで買ってきて、プレス機までつくっちゃったり。そのプレス機に粘土をはさむとすごい圧がかかるから、均一に近い板になって曲がりにくいらしい。僕もローラーの機械は持ってるけど、ローラーだとどうしても伸ばしたときのクセが出ちゃう。轆轤も回転方向にクセがついてしまうので、乾いたり焼いたりするときに元に戻ろうとする力が働いてすこし斜めになるんだよ。だから、取っ手をつけるときは、焼き上がりを想定して少し斜めにつけてる。
原田:それはおもしろい! 渡さんのまわりにもおもしろい人がいっぱいいますね。
吉行:経験してみないとわからないことですね! 土の方向というか、クセみたいなのがあるんだなあ……! 例えば、ダンボールには縦横の方向があるけれど、そういうのが土にもあるのかなあって気になってたんです。
原田:吉行くんのコーヒーのがらを使った器とかでも悩んでいたよね?
吉行:そうそう。僕、コーヒーのがらを使って器をつくったりしてるんですけど、型をおこしてきっちり均一につくっているのに、時間が経つにつれて粉の引き具合や油の量によってどんどん形が歪んじゃうんです。そういうことって焼き物でもあるんですか?
渡:精製をあまりしないで土を使うことはあります。
吉行:それはどういう目的で?
渡:あじもの(=土の質感や素材の特性を活かしたもの)をつくるときには、そういうことをするよ。かたちを均一につくっても、土の粒が均一じゃないからかたちが狂って仕上がる。
吉行:精製して使っている土も、同じ土を使ってるんですか?
渡:原料は一緒。精製の具合で結構仕上がりは変わるかなぁ。あとは窯の種類でも焼き上がりが変わる。
吉行:へー。おもしろい。水分の入り率を変えたりもするんですか?
渡:それもするよ。大きいものをつくるときは水を控えて硬めにする。
吉行:水分量が変わると、焼き上がりも変わるんですか?
渡:焼き上がりというよりはつくりやすさかな。均質につくろうと思うと固め、轆轤目をつけようと思ったり、すこし歪んだかたちをつくるときはやわらかめ。ものすごくクセのある土だと、水分量を多くしないと轆轤をまわしている途中で裂けたりヒビが入ることもある。ただ、やわらかくすると今度は自重でだれちゃったりもして……。
原田:なるほど、粗いのも良いなあ。
渡:それから、器の片方がピンク、片方が白、というように、色が変わる場所が、窯の中に数ヶ所こういう現象が起きる場所もあるよ。
原田:いつも同じ土を使ってるんですか?
渡:何種類か使ってるよ。ブレンドしたりもする。これは上野の土100パーセント!

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吉行:均一に見えてても違うんですよねえ。試験管に使う耐熱ガラスのチューブとかも工業規格だから均一だと思い込んでいるけど、実際ガラスをつくるときには回転しながら人の息を吹き込んでるものだから厳密にはそれぞれガラスの厚みが違ったりしますよね。そういうエラーみたいなものっておもしろいなあと思うんです。轆轤でも、均一にしたりしなかったりで随分かたちが違うんだなあと。精製具合の違う複数の粘土を、混ぜずにひとつの器に使うことってあるんですか?
渡:「練りこみ」っていう技法があるよ。これの技法で無形文化財保持者として人間国宝になった人もいるよ。
吉行:そうなんだ! 焼き物って、均一につくっていくものだと思ってた。
渡:「練りこみ」では違う粘土を使うから、それぞれの粘土の収縮率の違いが原因で割れたりヒビが入ったりするんだけど。松井康成さんっていう人間国宝の方は、その収縮率も計算してつくられていたそう。
原田:僕も「練りこみ」の器を鳥取で見たことがあるけど、土が一番重要だと聞きました。どう使うかは次の段階だと。
渡:そうそう、層の重ね方とかね。轆轤ひいて、表面削ったらちゃんと層が出てくるようになっているんだよ。ちゃんと計算されている。
吉行:見てみたいなぁ。
渡:確か、この奥に……あった! これこれ!

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原田・吉行:うわー!!!
吉行:地層みたい!!!
原田:思ったより軽い。すごい!
渡:松井さんは、大きい作品もつくってらっしゃるんだけど、それは「練上嘯裂文(ねりあげしょうれつもん)」っていうんだけど、「練りこみ」で轆轤をした後、針で筋を入れて内側からヘラあてる。すこし膨らませたら表面が裂けるでしょ? そうやって文様をつくっているみたい。
吉行:なるほど。すごいなあ。ドキドキしてきた。
渡:よし、それではそろそろ工房に行こうか。
原田・吉行:はい! よろしくお願いしますっ。

原田祐馬
1979年大阪府吹田市生まれ。「UMA / design farm」代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

吉行良平
1981年大阪生まれ。オランダのデザイン事務所を経て「吉行良平と仕事」を立ち上げ、プロダクトデザインを中心に商品開発やプロジェクトを行っている。 日常の情景、つくり方を通して、頭と手を動かし実験、検証していくことであるべき、色やかたちを探っている。

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