ものづくりの視点と試作 〜アイデア編 その2〜

2017/03/04

ーー「つくること」を生業(なりわい)にしているデザイナーの吉行良平と、「ふくちのち」設計チームの一員でもあるデザイナーの原田祐馬が、さまざまな福智町のものづくりの現場を訪ねました。そこで得た視点から、試作をつくり、手を動かす会議の全記録。

前回、吉行さんが発表したアイデア以前訪ねた渡窯の渡さんにお見せするため、今回はさらに意見交換しながら手を動かしていきます。右往左往しながら手を動かす会議が始まります。

原田:今回は、吉行くんに考えてもらったアイデアを具体的なかたちに落とし込んでみてもらうことから始めました。
吉行:前回のアイデアを元に治具(じぐ)のかたちを立ち上げてみて……こんな感じで、切った野菜を取り付けられるようになっています。サツマイモで挑戦しました。

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吉行:野菜の角度や、半径・高さの数値が、治具に反映されます。中心軸になる棒の先端は、尖らせて針のようにしています。中心がズレないようにするためですね。これは、前回の記事で紹介したトンボ治具のアイデアを参考にしました。
原田:コンパスみたいな形状ですね。でも、まわりに野菜があるので算数というより理科っぽいなぁ。
吉行:そうですね。サツマイモ1個を用いて、コンパスのようにぐるっと1回転させ出来上がった回転体がこちら。

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原田:さらっと言われると、なるほど!と思ってしまいました(笑)。しかもCGまで……。
吉行:もう少し特徴的なかたちが生まれるように考えて、サツマイモを1個だけでなく2個つなげたものも。考えるだけでもワクワクします。

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原田:治具が見たことのないものに……。これをなんて呼べば良いのだろうか。
吉行:そして、サツマイモ2個を用いて出来上がった回転体がこちら。それぞれの部品をセットする位置によっても回転体のかたちが随分変わることがわかってきました。

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吉行:これはどちらもサツマイモを用いていますが、それぞれ別の野菜をセットしてもおもしろいのではないかと思っています。輪郭がうまくつながるように意識してかたちを決めてみたり、それぞれの角度を変えてみても別のかたちが見えてきます。
原田:確かに。このイメージをみていると誰もサツマイモから出てきた形態とは思わないですね。真ん中、好きです。

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吉行:次に、紙でも模型をつくってみました。紙なので曲面などのかたちの再現度は実際より低いのですが、立ち上げてみると、実際に土を使って制作をしてみたくなりました。

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原田:この治具のようなものを実際に渡さんに使ってみてもらうとどうなるんだろう。
吉行:こんなの使えないってなるかなぁ。僕の好きな作家さんで、用途をわざと無くすような造形をしている方がいるんやけど、その作品を見ていると、用途を与えていないからこそ、見た人によって感じ方が変わるのもおもしろいなあと思っていて。
原田:おもしろいね。ただ、上野焼のルーツが「茶道具」という、もともと用途のあるものだから、今回の「用途がないものをつくる」というのは、フィットしてないかも。最近、バーナード・リーチの人生を描いた原田マハの「リーチ先生」という小説を読んだのだけど、その物語の中で、九州に行ったリーチが、生活の延長線上に器づくりがあることの大切さについて語っていたのがおもしろかったことを思い出したなぁ。
吉行:確かに、素材に逆らわず手を動かして、それが道具へと変わることに興味があります。土を探したり、藁が模様をつくりだしていたり。試行錯誤をしたり。さらに、実験的にいくのなら、果物や野菜を輪切りにしたようなかたちをつくって、無造作に積み重ねて焼いてみる、とかもワクワクするのかなぁ。
原田:なるほど。治具だけでなく、もうひとつくらいアイデアを持っていけたら、いろいろな角度から比較しながら実験できそうな気がする。
吉行:渡さんのところは轆轤(ろくろ)を回してつくっているから、回転体を素にした考えを膨らませてみようかなぁ?
原田:吉行くん、轆轤ってまわしたことある?
吉行:僕、ないんですよねー。まわしてみたいなぁ。想像だけど、土を回しながら、立ち上げていくんですよね? 内側と外側を同時につくっていくのかな……。今回、僕がつくってみた治具は、回転体を知る、というものだから、実際に器をつくるとなると、また少し使い方は違うのかも。
原田:道具って、極論を言うと手や目が重要なんだと思うのだけど、それに仕掛けを施すのはどうだろう。手袋して轆轤を回してみるとか。難しそうだなぁ……。
吉行:あっ! ひとつ思いついたんやけど、こんな感じで土の配分を器の部分ごとに変えて焼いたらどうなるんだろう。焼き上がりの色味も縮み方も違うものになったりするのかな? 想像でしかないけれど。

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原田:妄想がふくれてきて、ちょっと現場に行ってみないとわからないことが増えてきたなぁ。早く、渡さんのところに行きたくなってきた!
吉行:では次回、渡窯にお邪魔して、いろいろと相談にのってもらいましょう!

原田祐馬
1979年大阪府吹田市生まれ。「UMA / design farm」代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

吉行良平
1981年大阪生まれ。オランダのデザイン事務所を経て「吉行良平と仕事」を立ち上げ、プロダクトデザインを中心に商品開発やプロジェクトを行っている。 日常の情景、つくり方を通して、頭と手を動かし実験、検証していくことであるべき、色やかたちを探っている。

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